前回は料金に関するお話でしたが、今回は肝心な同意書についてご説明いたします。

 

 そもそも鍼灸マッサージが法律上、どのようなものとして位置づけられているのか、また国民健康保険という制度はどのような意図として成り立っているのかを理解する必要があります。これらを順に述べていきます。

 

①鍼灸按摩マッサージ指圧という行為の位置付け

 鍼灸マッサージの行為は法律上、” 医療類似行為 ”とされています。

 ※当初は医業類似行為ではないとされてきましたが、近年は後述のように認識されたようです。

 

 そして医師が行うのは、” 医療行為(医業行為) ” です。

 

 医療類似行為というのは分かりやすく申しますと・・・

 疾病の治癒や保健という目的で行う一方、医療とまではいえない行為があるものです

 

 例えば、按摩マッサージ指圧は疲労回復や健康増進といった慰安の側面があること。

 鍼灸は経絡や経穴といった概念が科学的に証明されていないということ。

 柔道整復師は外科手術、薬品の投与等の方法によらずに回復の方法を図ること。

 などです。

 

 そして医業類似行為の資格は以下の4種あり(※2011年 厚生労働省医政局より)、

 ・按摩マッサージ指圧師 ( 按摩・マッサージ・指圧 )

 ・鍼師(はり)

 ・灸師(きゅう)

 ・柔道整復師 ( 骨折・脱臼・打撲・捻挫等 )

 であり、国家資格です。

 

 それ以外のものは、

 ・整体

 ・カイロプラクティック

 ・ボディケア

 ・リラクゼーション

 ・もみほぐし

 などの民間資格で、医業類似行為以外の〇〇療法というものも含まれます。

 

 その為、整体やリラクゼーションというのは、今すぐにどなたでも生業として可能です。これは職業選択の自由という背景に生じたものともいえます。故に信用できるか否かは各自の判断に委ねられています。

 

②国民皆保険制度と鍼灸マッサージの医療的判断

 我が国、日本国は国民皆保険という制度があります。これは私たちが病気や怪我をした場合に、誰でも何時でも何処でも同じ医療が受けられ、費用も1割~3割という少ない負担です。

 

 資本主義国家であるのに、まるで社会主義のような政策です。

 

 しかし私たちは、万が一事故や災害に遭って怪我をしたり、突然心臓発作が起きたり、或いは高熱を出して風邪をひいたりと、いつどうなるかは分かりません。

 そんな時でも1割~3割の費用負担で安定した医療措置が受けられ、残りの費用は国民の税金で賄われます。

 日本国憲法で最低限度の生活を営む権利という背景もあり、生活保護もその一つとして成立していると思われます。

 

 良い制度なのか悪い制度なのかは人それぞれ感じ方が違うかもしれませんが、この制度を利用できるのはあくまでも怪我や病気を治癒する目的の場合のみです。疾病予防や健康増進に使うことはできません

 

 ※乳幼児や高齢者の予防接種も本来は保険適用外で全額負担です。一部で安価に済ませる方法もあると思いますので各自お調べ下さい。

 

 故に①で申し上げた、疲れたからマッサージで楽になろう だとか、なんとなく調子悪いから鍼灸を受けてみよう というのは適用外です。

 なので、鍼灸マッサージを医療保険(健康保険)を適用する場合は、疾病が認められなければなりません

 

 そしてその判断を下すのは診断行為が許されている医師のみです。

 ※当院も ” 診断 ” というと医師法・あはき法等に抵触することになりますが、サイトでは便宜を図るため使用させて頂いております。ご了承下さい。

 

 よって鍼灸マッサージを医療保険(健康保険)を適用する場合は、医師の判断や指示の元で適切に行わければならないというのが大原則です。

 

 では、人体がどういった状態の場合に保険診療が可能なのかを下記に示します。

 

按摩マッサージ指圧の保険適用範囲

 按摩マッサージ指圧の保険適用範囲は ①関節拘縮②筋肉麻痺 の症状が見られる場合に保険診療が可能です。これは傷病名に拘る必要はなく、あくまでもその症状があれば良いとされています。故に、それらしい傷病名を医師に付けてもらうのが一般的です。人体の部位別に参考となるサイトがありましたのでリンクを貼ります。

 

https://ar-ex.jp/kisochishiki/index.shtml

 

 例えば ①関節拘縮 とは腕や脚などの可動域が狭くなっていること、分かりやすく申しますと、” 腕が挙がらない・脚が広がらない ” や ”肘や手首、膝や足首の曲げ伸ばしが充分でない ” などを指します。これは ごく普通の一般人にも当てはまること です。

 

 肩が痛くて可動域が狭くなっているなら「拘縮肩」、腰が痛いなら「変形性腰椎症」というように、書類としてそれらしい傷病名を付けてもらいましょう。

 

 按摩マッサージ指圧の場合は傷病名が幾つあっても大丈夫ですので、全身を治療したい場合は首や肩、腰や脚に関わる傷病名があると良いです。

 

 ②筋肉麻痺 とは神経が麻痺して痛みや温度などの知覚が得られにくいことを指します。これは本人にしか分からないような症状ですが、皮膚をつねったりする痛覚テストや、熱いものを皮膚に近づける温覚テストで客観的判断をすることがあります。

 

 【重要事項】

 ①同意書の期限は最長3ヶ月です。継続する場合は再同意が必要ですが、口頭でも大丈夫です。

 ②変形徒手矯正術(関節可動域訓練 ⇒ 関節運動のこと)は1ヶ月ごとの同意書が必要です。

 ③回数の制限はありませんが、1年以上且つ月16回以上の継続治療は理由が必要です。

 ④往診が可能な場合は自力で通院が困難な場合であり、患者の求めに応じるものではありません。

 

 歩行が困難で自ら通院できない場合は、往診してもらうことで施術を受けられます。

 【歩行困難の具体例】

 (1)脳血管障害の後遺症

 (2)脊椎管狭窄症

 (3)変形性関節症

 (4)関節リウマチ

 (5)パーキンソン病 → 現代では不治の病

 (6)四肢筋力低下 → 立位の保持や歩行が困難

 (7)骨折後遺症

 などが当てはまります。ご参考まで。

 

鍼灸の保険適用範囲

 鍼灸の保険適用範囲は幾つか注意が必要です。なぜならば前述のように鍼灸治療概念である経絡経穴といったものが科学的照明されていないからです。

 故に保険適用範囲の定義として ” 医師による適当な治療手段のないもの ” とされています。つまり医師の診断且つ治療を受けたけども、どうも症状が改善しない場合に限り、医師の同意によって鍼灸師の保険診療を受けることができます。

 

 そのせいもあってか、6つの傷病の場合に限られています。いずれも慢性的疾患といえます。

 (1)神経痛 → かなり範囲が広く、殆どがこれに当てはまります。

 (2)リウマチ

 (3)頸腕症候群 → 首から肩にかけての痛み。

 (4)五十肩

 (5)腰痛症 → 腰の痛みはコレ!

 (6)頸椎捻挫後遺症 → ムチウチのこと

 (7)その他( ) → よっぽどのことが無い限り使えません。

 

 【重要事項】

 ①上記の6つのうち、重複して鍼灸治療することはできません。

 ②当てはまる傷病について、先に医師の治療を受けていることが好ましいです。

 ③保険診療で鍼灸を受けている期間は、他の医療機関で治療を受けることができません。

 ④マッサージも受ける場合は別々に同意書が必要で、且つ傷病名も重複できません。

 ⑤同意期限は最長3ヶ月までです。継続治療の再同意は口頭でも大丈夫です。

 ⑥回数に制限はありませんが、1ヶ月15回以内が適切だと思います。

 

③同意書について

 これまで鍼灸マッサージの位置付けと保険適用範囲などをご説明いたしました。

 医師に判断をして頂くわけですが、その書類が ” 同意書 ” というものになります。

 

 ※用紙自体は当院も用意してあります。当院が用いる同意書の形式は通常よりも詳細に記入して頂くようにしてあります。これは審査をする保険者に誤解が生じないようにする為です。

 ※柔道整復師は同意書が必要ありません。接骨院・整骨院は限られた範囲内で診断ができ、主に捻挫等の傷病名で保険適用しているようです。

 

 この同意書が一番の壁であり、10年前くらいまではぺらぺらで障子紙だったかもしれませんが、最近は鉄壁で固い守りになってきました。

 

 というのは、医師会から同意書は安易に書くなというお達しが出ているくらいです。

 

 しかしながら、全く同意が得られないという訳ではありません。医療という視点から見て正当性がある場合は医師側として同意することが望ましいと思われます。とはいえ、お医者さんも人間ですのでお互い様です。きちんとした態度で臨む必要があります。

 

同意書を書いてもらうコツ

 ①普段から係り付けの医師と関わっておく。

 ⇒ いきなり初診で同意書を持っていくのも乱暴です。

 ⇒ 歩行困難などの重い症状は通りやすいです。

 ※当院では理解のある医師との連携を取るようにしています。

 

 ②病院よりも開業医、整形外科よりも内科、よりベターなのは漢方医。

 ⇒病院よりも個人で開業している医師の方が理解を得やすいです。

 ⇒ 整形外科は商売敵となり、あまり協力してくれません。

 ⇒ 内科でも整形外科の先生へと促されることもあります。

 ⇒ 漢方医は鍼灸マッサージに対して理解を得られやすいです。

 ⇒ 歯科医師・美容整形医などは認められません。

 

 ③医師が同意書を書くにあたり、何かしらの責任は問わない。

 ⇒ 医師の同意リスクを無くす為に、誓約書を用いましょう。

 ※当院ではその為の誓約書を用意してあります。

 

 ④同意してもらえない場合は理由を聞いておく。

 ⇒ 医師にも自由意思がありますので責めないことです。

 ⇒ やんわりと理由を聞いておくと良いです。

 ※当院では初回同意のみ、患者さんと同行しております。

 

※当院では同意書を書いてもらう前に、その正当性について少々判断させていただいています。事前にご相談下さい。